About
ロンドン郊外に居を構える著名な科学者エイモリ―卿の邸の平穏な晩餐
食後のコーヒータイム、卿が意外な事実を明かし
居合わせた者たちに異様な緊張感がはしる
「邸内にいる誰かが、夕食前に金庫から極秘書類を盗み出した
今から部屋の灯りを消している間に、書類を返せば罪には問わない」
しかし再び灯りがついたとき、卿は息絶えていた
混乱のさ中、卿が書類の調査を緊急依頼していた名探偵ポワロが到着
大勢の中で卿の死を演出した大胆な犯人は?
エイモリ―卿の息子夫婦、お喋りな妹、姪、秘書、執事、突然の訪問者、
ポワロの指南で次第に露呈していく家族の秘密、
そして追い詰められていく犯人との頂上決戦!
解説
アガサ・クリスティーの作品は知的で優雅です。
特にクリスティーの処女戯曲である本作は、それまでの自身の小説の舞台化作品に飽き足らず遂に自ら執筆しただけあり、舞台にして面白くなりそうな要素が随所に散りばめられているばかりか、舞台劇としての見せ方や工夫が緻密に計算されています。なんといっても名探偵ポワロの登場は観客をワクワクさせ、ともに推理していく楽しみはミステリーならではの醍醐味、小気味良いラストは爽快です。
クリスティーはこの戯曲の中で、原子爆弾の発明者と化学式を抹殺しています。想像の世界を広げてくれる娯楽作品でありながら、平和へのメッセージが込められており、微笑ましいエンディングが印象的な上質の戯曲です。
2009年に博品館劇場にて初演、三波ポワロが好評を博し、2010年にはシアター1010にて再演、以来再々演の要望も高く、2013年上演の運びとなりました。